人獣共通感染症

更新日:2024年04月18日

人獣共通感染症について

人獣共通感染症とはヒトから脊椎動物に、脊椎動物に相互に感染しうる感染症のことです。

その病原体はバクテリア、ウイルス、寄生虫あるいは通常では見られない微生物であり、食物、水あるいは環境を通じて直接に接触することで広がっていきます。

輸入の禁止や検疫など防疫が行われている理由の一つがこの感染症の対策であります。

 

人獣共通感染症にはどんな感染症があるの

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」以下「感染症法」に定義される感染症のうち、人獣共通感染症に該当する感染症に該当するものは主に以下の通りです。

 

人獣共通感染症一覧
  当てはまる主な人獣共通感染症 特徴 主な対応・措置




エボラ出血熱、マールブルグ病、ペスト、クリミア・コンゴ出血熱、ラッサ熱 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症 ・原則入院
・建物の立ち入り制限・封鎖
・交通制限、就業制限
・消毒などの対物措置




結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9) 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症 ・状況に応じて入院
・就業制限
・消毒などの措置




細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症 感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうる感染症 ・就業制限
・消毒などの措置




一 E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病 人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症 ・動物の措置を含む消毒等の対物措置

予防方法

動物への感染予防

動物への感染を予防するためには、「感染源対策」と「感染経路対策」、「動物に対する対策」の3つがあげられます。

  1. 感染源対策

動物の感染源対策としては以下のものがあげられます。

・病原体に汚染された飼養施設

・感染動物の糞便

・病原体に汚染された餌・水

・共通感染症に感染した他の動物(ヒトも含む)

飼養施設の不衛生は、ノミ、ダニ、ネズミなど、共通感染症を媒介する動物の発生を促し、愛玩動物の健康を脅かし、飼養者本人の他、従業員や店を訪れる客、周辺住民、家族の健康にも悪影響を及ぼしかねません。
日々適切な清掃を行って動物の飼養環境を清潔に保つとともに、病原体による汚染が疑われるときは、獣医師と相談し、適切な消毒を行わなければなりません。
感染動物の糞便は飼養施設の不衛生化の他、糞食による直接感染や、粉塵の飛散による飼養施設全体の汚染につながります。掃除を頻繁にし、排泄物はすみやかに適切に処理しなければなりません。
病原体に汚染された水と餌による感染を防ぐためには、新鮮なものを与え、肉類は充分加熱する必要があります。
感染の疑いのある動物については、他の動物の感染源とならないよう、獣医師の診断のもと、適切に隔離し、治療しなければなりません。動物が感染源とならないよう清潔な飼養管理を心掛けることが必要です。 

  1. 感染経路対策

動物への直接伝播としては、感染動物との接触、けんか(咬傷)などが考えられます。放し飼いにせず、出来る限り他の動物との接触を控えさせることが重要です。特に野生動物との接触は断たなければなりません。野生動物の感染症や保有している微生物に関しては、不明な点が多く、どのような感染症の原因となる可能性があるのかも明らかでないからです。
動物への間接伝播としては、ネズミなどの中間宿主の捕食、病源体等に汚染した餌・水の摂取、ノミや蚊などが媒介生物となり媒介することが考えられます。これらの感染経路対策の多くが、動物の飼養者による「飼い方・しつけ」に依存すると考えられます。飼養者は、日頃から動物に対して以下のような基本的な「飼い方・しつけ」を行うなどの注意が必要です。
・ネズミなど(中間宿主)を捕食させない。
・常に新鮮な水を与える。野外の生水を飲ませない。排泄物は速やかに処理する。
・生ゴミ置き場に動物を入れさせない。生物のような非加熱の肉などを与えない。
・衛生昆虫の侵入を防ぐ。衛生昆虫等を駆除する。
・他の動物との咬傷事故を防止する。
飼養施設にノミなどの媒介生物の生息が確認されるようであれば、殺虫等の処理を適切に行う必要があります。 

  1. 動物に対する対策

動物に対する対策としては、動物の健康を維持することと、ワクチン等により、疾病予防を行うことです。
動物の健康を維持するためには、清潔な飼養環境、適度な食事と運動など、飼養者が適正な飼育を心がけ、病原体による感染を防ぐための体力を養ってあげなければなりません。体力(免疫力)が低下した不健康な状態では、通常無害な微生物による疾病を引き起こしたり(日和見感染といいます)、共通感染症の感染の確率も高まります。また、異常の早期発見による診療、治療、隔離等も必要です。
イヌについては狂犬病※1とレプトスピラ症※2のワクチンがあり、これらの共通感染症の予防に効果的です。その他のイヌ・ネコ用のワクチンは共通感染症との関わりはありませんが、ワクチンによって発病を抑え、健康状態を維持することにより、共通感染症の感染リスクを軽減することにつながります。 

狂犬病は発症した場合ほぼ確実に死に至る感染症。予防接種をしない場合は罰則も規定されている。風邪のような症状からはじまり、中枢神経症状が現れ、昏睡状態となり不整脈、全身の痙攣、呼吸障害などが起こり死に至る。

※2レプトスピラ症は急性熱性疾患であり、風邪のような症状のみで回復する軽症型から黄疸、出血、腎障害を伴う重症型まで多彩な症状を示す。

 

人への感染予防

人への感染を予防するためには、「感染源となる動物対策」と、「感染経路対策」、 「人に対する対策」の3つがあげられます。

  1. 感染源対策

衛生的な飼養管理が最も有効な感染源対策です。対応としては動物の感染源対策に 準じます。 異常がみられる動物については、獣医師の診断のもと、適切な隔離と治療を 行わなければなりません。病気は早期発見と早期治療を心がけることが重要で、 必要により隔離等が行われます。動物が保有している共通感染症の病原体を、 人に感染する前に排除し、動物を健康な状態に戻すことが必要です。

  1. 感染経路対策

直接伝播に対する対策として、ペットとの過剰なふれあいを控えることが感染リスクを減らすのに最も有効な手段となります。イヌ、ネコは、パスツレラ菌、サルモネラ菌などを保菌しています。そのため以下のような対策が重要となります。

・ペットとキスをしない。
・口移しでエサを与えない。箸渡しで物を与えない。
・ペットと一緒に寝ない。
・ペットの爪を切っておく。
・ペットと触れ合ったあとはすぐに手を洗う。
間接伝播のうち、糞便などの排泄物は感染源となりやすく、掃除を頻繁に行い、排泄物はすみやかに適切に処理します。動物を飼育している施設や部屋では、動物の排泄物や皮膚片や羽が埃となって室内に浮遊している可能性があり、丁寧な掃除と十分な換気を行うことが必要です。また状況により消毒も必要となります。カメなどの飼育水を台所に廃棄したり、容器の掃除を行うことは食品を汚染する可能性が高いため避けなければなりません。
動物を取り扱い、飼育施設等を掃除する際に、必要に応じてマスク、ゴム手袋等を着用します。

  1. 人に対する対策

動物種ごとの生理、生態、習性等をよく理解し、咬傷事故等を未然に防ぐことが重要です。咬まれたり、ひっかかれた場合には、その部分を十分洗浄し、
消毒することが必要です。
健康な人でも風邪などで体調を崩したり、疲労によって免疫力が低下すると、共通感染症に感染する可能性が高くなります。通常感染しない微生物による日
和見感染が起こることもあり、体調がすぐれない時などは、動物との接触を避けることが重要です。
疥癬、皮膚糸状菌症、結核などは人とイヌ・ネコ間の再帰性感染症(人から動物に感染したものが人へ戻ってくる病気)となる可能性があります。室内飼育のように、人とペット動物が密閉された空間を共有している場合には、動物
からうつる感染症のみならず、人から動物へうつる感染症の存在についても認識しなければなりません。
ペットとの過剰な接触が共通感染症増加の要因の一つと考えられています。
動物との距離が近いほど感染のリスクは大きくなります。感染を予防するという観点から、以下のようなペットとの節度ある関係を保つことが重要です。
・ペットと食器を共有しない。
・食物の口移しなど過剰なふれあいをひかえる。
・ペットを寝床に入れない。
・排泄部を処理したときは手をよく洗い、必要に応じて消毒すること。
人と動物の双方において、共通感染症を予防するには、飼養者が共通感染症について的確な情報を習得することが重要です。人と動物の共通感染症に感染する原因がどこにあるのか、どのように予防できるのかを知り、確実に実行す
ることが必要です。
動物を飼育するものは正確な知識を身に付け、自らの感染のみならず、家族や近隣住民への感染を予防するための努力が求められています。

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