バードウォッチング

更新日:2021年04月01日

粟国ってどんなところ?

 粟国島は沖縄本島の那覇市の北西約60キロメートルの洋上に位置し面積7.64キロ平方メートル、周囲約12キロメートルのほぼ三角形の島です。 この島では隣接する沖縄島でも観察される機会の少ない希少な鳥類が観察されるため、渡り鳥が集中的に利用する島だと考えられます。

 このことは、中国大陸や朝鮮半島から飛来する迷鳥が数多く記録されている石川県の舳倉島(へぐらじま)の状況によく似ています。

粟国島で見ることの出来る野鳥

 これまでに観察された鳥類記録をまとめると、粟国島では約150種(2006)になるものと思われます。

 その生息状況を概観すると、図1に示したように、渡りをしない留鳥が15種(外来種含む)、夏季に繁殖のため飛来する夏鳥が5種、沖縄より南に越冬地をもち、秋季に通過して旅鳥や沖縄で越冬する冬鳥が130種で、これらを合わせると粟国島では150種の鳥類が確認されたことになります。したがって、留鳥が少なく、夏鳥・旅鳥・冬鳥の渡り鳥が全体の8割を占めていることになります。これは島面積が小さいことにより、島に生息できる留鳥の数がもともと少ないことと、野鳥は渡りを行う鳥が多いことに起因し、粟国島はいかに渡り鳥が利用しやすい島であるかが理解されます。

 その中で留鳥の生息状況としては、集落周辺ではスズメ、イソヒヨドリ、リュウキュウツバメ、シロガシラが生息し、農耕地のような開けた環境では、草原性のセッカやミフウズラの他、キジバト、ハシブトガラスが確認できました。また、農耕地に隣接して設置されたため池や水路などではバン、カワセミ、リュウキュウヨシゴイがすんでいます。なお、県内で留鳥とされるカイツブリやカルガモ、タマシギ、ウグイス、ゴイサギなども観察されましたが、粟国島で繁殖を行い、定着しているかどうかは不明です。

 森林地域ではメジロ、ヒヨドリ、ツミなどが確認されましたが、他の島に比較してメジロを見る機会がすくないように思われます。また、森林地域に設置された池(大正池)ではカワセミ、リュウキュウヨシゴイなども確認できました。

 さらに、海岸や潮が引いた時にできる小干潟やリーフには、留鳥のクロサギやシロチドリが生息しています。

 一方、渡り鳥の中には、県内でもごくまれに飛来する迷鳥として、コクマルガラス、キクイタダキ、ハイイロオウチュウ、カンムリオウチュウ、ムジセッカ、キビタキ、キレンジャク、コマドリ、トビ、ホシムクドリ、ギンムクドリ、シベリアムクドリなどが観察記録の少ない種が確認されました。

 石川県の能登半島輪島市の沖合約50キロメートルに舳倉島という小さな島がありますが、ここは全国的に珍しい鳥が観察される探鳥地として有名な島で、秋季から冬季、春季など野鳥の渡り時期には民宿に人が宿泊できないくらいバードウオッチャーが訪れます。このため、小さな島ながら、約300種の鳥類が記録されています。

 この島のように粟国島は、沖縄島の西に位置し、いろいろな渡り鳥が飛来して来ますので、最近希少な鳥類の観察記録が増え、バードウオッチャーの間では隠れた探鳥地となっています。まさに沖縄の「舳倉島」となっています。

鳥類の保全

 本来、島に人が入る前は、島には豊かな自然林があり、数少ないにせよ留鳥や渡り鳥のの重要な生息地として存続していたことが想像できます。しかしながら、人がすみはじめると、農耕地の拡大や燃料等で森林面積が減少し、おそらく、数多い鳥類が絶滅していったものと思われます。

 ですから、鳥類を保護するためには、これ以上森林面積を減らすことなく、さらに現在ウーグ浜周辺での海岸林の植林が行われているように、森林面積を増やすことで、鳥類の生息場所も増加し、留鳥の絶滅を回避できることは自明なことです。このことはまた、我々人間にも潤いのある緑豊かな自然環境として機能や、自然学習の場としても大切になっていくことでしょう。

 さらに、バードウオッチングへの志向は今後除々に増えることが予想され、粟国島は「沖縄の舳倉島」として訪れるバードウオッチャーも年々増加していくことでしょう。これは島の活性化に結びつくものと思っています。

 そのためには様々な野鳥が生息できる自然豊かな島にしていく努力が必要であり、このことで自然との共生を図りながら、島を活性化できるエコツーリズムや島まるごとミュージアムなどへの展開等に期待のもてる島になるものと考えています。

(沖縄野鳥研究会 嵩原建二)

粟国島を訪れる主な鳥たち

粟国島で観察された野鳥の一部を紹介します

水辺にたたずむ白いアマサギを、左側面から撮影した写真

アマサギ

遠くの砂浜にいる灰色の翼と白い胴体を持った3羽のミユビシギを、右側面から撮影した写真

ミユビシギ

水辺から水面の様子うかがっている灰色のキアシシギを、左側面から撮影した写真

キアシシギ

枝の分かれ目にとまり首を横に向ける茶色でまだら模様のサシバを、正面から撮影した写真

サシバ

水面から出た岩の上にたたずむクロサギ(白型)を、左側面から撮影した写真

クロサギ(白型)

灰色の空を左から右に飛行するチョウゲンボウを、斜め下から撮影した写真

チョウゲンボウ

青い空を上から下へ飛行するミサゴを、斜め下から撮影した写真

ミサゴ

土の上にたたずむ暗緑色のタゲリを右側面から撮影した写真

タゲリ

遠くにたたずむ黒褐色でまだら模様の3匹のムナグロを右側面から撮影した写真

ムナグロ

水中に足を浸からせたたずむ白いチュウサギを、右側面から撮影した写真

チュウサギ

茶色の羽と白い胴体を持つ複数の小さいシロチドリを、遠目から撮影した写真

シロチドリ

コンクリートの段にとまる灰色の翼を持ったアオサギを、遠目から撮影した写真

アオサギ

電柱にとまる茶色のトビを、斜め下から撮影した写真

トビ

遠くに見える灰白色で細かいまだら模様の2羽のハマシギを、右側面から撮影した写真

ハマシギ

首を上げて水面に浮かぶ黒褐色のカイツブリを、右側面から撮影した写真

カイツブリ

波止場を背景に灰褐色の翼を持った3羽の小さいメダイチドリを、遠目から撮影した写真

メダイチドリ

遠くの水上に首を引っ込めて浮かぶ黒褐色のコガモを、左側面から撮影した写真

コガモ

透明感のある水面を背景に、長い首を折りたたみ岩場にたたずむ白いダイサギを、左側面から撮影した写真

ダイサギ

野鳥の頁については、沖縄野鳥研究会の嵩原建二氏のご協力を得て作成しました。

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沖縄県島尻郡粟国村字東483番地
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